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「い、今……降りるよ」
「おーおー、大崎君は素直だなあ。このまま素直に殴られる覚悟があるなら、早く降りてこいよー」
一瞬腕と脚が止まる。腕の力が強まる。
それでも、僕は自分の体よりもその本の方が大切だった。宝物。僕の、宝物だからだ。
しぶしぶ木から慎重に降り、即座に僕を囲んだ三人衆に視線を配る。僕のランドセルをグルグルと軽々しく片手で回しながら、その内の一人が言う。
「じゃあ、むかつくからボコボコの刑で!」
その瞬間、大きな弧を描いて僕のランドセルが宙を舞った。重さに従って、重力に従って、僕のランドセルが数秒空中を舞った後、川の表面にボチャンッと大きな水飛沫をたてて着水した。
「あ、ぁぁあああっ!!」
「ほら、幹也も健児も、やっちまおーぜ!!」
その後はもう、僕に抵抗の意志は残っていなかった。
これまで一度も感じた事のない痛みが腕やお腹に生じ、何度も咳き込む度に堪えきれない涙が溢れた。何で僕なんだ、何で今日なんだ。そう思うも、僕のランドセルは既に川に落ち、瞳に映らぬ場所まで流されていた。
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