クラブ・キャッスル

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 僕たちは皆、レイカさんによってスカウトされた。  季節、場所、時間帯はそれぞれバラバラだったけど、レイカさんに見出されたことは同じだ。レイカさんの眼力は確かだと思う。カズやタクマさんの人気で、それは証明されている。  コールボーイ、セックスカウンセラー、出張ホストなど、世間での呼び名は様々だけど、『クラブ・キャッスル』ではキャストと呼んでいる。どういう基準で、僕たちがキャストとして適性があると判断されたのか、全然わからない。ルックスといい体格といい、タクマさんとカズ、僕の間には共通点がないからだ。  いや、一つだけある。僕たちは皆、初対面で、レイカさんに魅かれた。恋愛感情とは少し異なる。大人の女性に対し、憧れに近い親愛の情を感じたのだ。  レイカさんは、これまで出会ってきた女性とは明らかに違っていた。うっかり手を出したら大火傷する、でも触れずにはいられない、そんなリスキーな魅力。猛毒を含んだ大輪の花、といえばイメージに近いだろうか。 〈女性を抱く仕事〉にふさわしい男かどうか見極めるため、スカウトの後で受けたテストも、毒花にふさわしいものだった。 「じゃあ、これから私を抱いてもらうわね。あなたのセックスをすべて見せてちょうだい」  ベッド上の実施テストというわけである。そう、僕は一年前、レイカさんを抱いている。  あの時から、僕の人生は大きく変わったのだ。
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