女性を抱く仕事

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女性を抱く仕事

 ホテルの廊下で腰に手を回すと、裕美子さんは大きく身を震わせた。予想外のスキンシップだったらしい。 「すいません、いきなり失礼しました」  僕が謝ると、恐縮していた。 「いえ、私の方こそ。少し緊張しちゃって」  本当は少しどころではない。足元がふらつくほど、歩き方もぎこちない。  裕美子さんは初めて会うお客様だ。おそらく20代後半だろうけど、未経験の少女のように、ガチガチに緊張している。  滑稽(こっけい)だとは思わない。むしろ可愛らしいと思う。もう一度、腰に手を回したが、今度は逃げなかった。 「気持ちを楽にしてください。今日は一緒に楽しみましょう」  耳元で(ささや)くと、裕美子さんは小さく頷いた。恥ずかしそうに、頬を赤く染めている。  平日の昼下がり、妙齢の女性にとって、僕のような男と一緒に過ごすことは、大冒険であるにちがいない。アバンチュールというほど大袈裟なものではない。ただ、日常のわずらわしさを忘れ去り、秘められた性欲を解放してやるだけだ。  男性なら気楽に風俗店で発散できても、女性にとっては容易なことではない。後ろめたさや良心の呵責、世間の目というものもあるだろう。だから、勇気を出して来てくれた裕美子さんには、誠意を込めて応じたいと思う。  代わる代わるシャワーを浴びた後、裕美子さんの求めで、照明を暗く絞った。清潔なシーツの上に、バスタオルを堅く撒いた裕美子さんを横たえる。 「キスしてもいいですか?」  裕美子さんは小さく頷いた。  お客様の中には、セックスはしてもキスは絶対にダメ、という人がいる。こだわりは千差万別だから、初めての人には念のために、訊くようにしているのだ。相手が遊びなれた人なら、どんなセックスが好みなのか事前に確認する。  セックスを心から堪能するためには、コミュニケーションは不可欠である。  裕美子さんの髪を優しくなでながら、僕は唇に軽くキスをした。明るい茶色に染めたセミロングの髪。ぽってりとした肉感的な唇。暗闇の中では、視覚が利かない分、触覚が研ぎ澄まされる。  僕の指先と唇が、裕美子さんの中の女性を暴いていく。  キスをしながら、バスタオルの合わせ目を解いた。プレゼントの包装紙を外すように、ゆっくりと左右に開く。
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