プロローグ サマープリンセス

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プロローグ サマープリンセス

深夜2時。 美百合は喉の乾きを感じて目を開けた。 キッチンに降りて水でも飲んでこようと、もぞりと身体を動かすと、 「どうかした?」 たったそれだけのことで、隣で眠っていたはずの龍一は目を覚ましてしまう。 まったくこの人は……。 意識を無くすように熟睡する、なんてことがあるのだろうか。 いぎたなくも爆睡中に、龍一にほっぺたを引き伸ばされたブス顔を写メされ、その写真をあろうことか携帯の待受にされてしまっている美百合は、 龍一のわずかな気配でも目を覚ます敏感さにため息をつく。 「ううん、ちょっと喉が渇いただけ。お水飲んでくる」 そう言って、身体を起こそうと肘を立てると、 「ひとりで行けるのか?」 と龍一はいたずらっぽく笑った。 「またコウモリを見て大騒ぎするなよ」 少し前の出来事なのに、龍一は今だにこのことで美百合をからかう。 『家の中にコウモリが飛び込んできたら、誰だって悲鳴をあげるわよ!』 と美百合は反射で怒ろうとしたが、龍一が浮かべる美しい笑顔を見ていると、何故か赤面するほどこっちが照れて、結局、なにも言えなくなってしまう。 本当に見慣れるということがない、美しすぎる顔だ。 ……気に入らない。 別に龍一からウケを取ろうとしたわけではないが、コウモリはみんな吸血コウモリだと思い込んでいた美百合が、そう言って反論したら、 龍一はそこが魅力のクールなイメージを払拭する、大爆笑まで披露してくれた。 龍一は今もクックッと笑いながら、 「日本に吸血鬼はいないから安心しろ」 ……ムカツク。 なんだってこの人は、こんなにイジワルなのだろう。
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