それは少し前の、ある異国の地で

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それは少し前の、ある異国の地で

 少女――エイミは、いつものように退屈を持て余していました。  朝から母はいつものようにエステに出かけ、そのあとおそらく豪華なディナーを愛人と食べてから帰るから、きっと真夜中になるでしょう。  父はいつものように急に仕事が入ったと言って出かけ、やっぱり帰りは真夜中になるのでしょう。  身の回りのことは全てお抱えの家政婦がやってくれます。  なんだかんだ言って父親はこの町一番の銀行に勤めているキャリア組のエリートらしいですから、お金だけはあるのです。  ――でも、エイミは嬉しくもなんともありません。  学校の友達はエイミの事を避け、遠くからひそひそ話をしたり指をさして嫌な笑いをします。  最初はなんとか仲良くなろうと思ってたエイミでしたが、ある日偶然話の内容がわかった時から努力をやめました。  ――あの娘の親って、他に好きな人がいて不潔だからお前はあの娘と付き合っちゃいけませんって言われたの。
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