第1章

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しかし、思ったよりも短い時間でお開きとなり、一十三はホッとした。その後、武は会場を出て、また違うホテルへ移動する。 そして、別のパーティー会場へ入っていった。入口に『山王会新会長祝賀パーティー』と書かれている。 ギクッとしたが、入ってしまったらもう引き返せない。 すでに白川の挨拶は終わり、会場の中央で、しきりに握手を交わしている。 武は臆す事なく、つかつかと白川会長に近寄っていった。白川が一十三を見つけるなり、いきなり大きな声と満面の笑顔で 「ひっとみちゃーん!!」と叫んだ。会場全員のこわもての顔が、一気に一十三のほうを見る。 「おい。あれ、一十三ちゃんじゃないのか?」「間違いない!神技で爛お嬢を倒した一十三ちゃんじゃ!」 すると、もの凄い勢いで、一十三の周りにヤクザの親分衆が集まってくる!そして「ファンです!握手してください!」 と、全員手を伸ばしてくる。鼻の下を伸ばすって、こういう事か・・・と、一十三は感心した。 本当に、鼻の下の部分が伸びるんだな、と。白川が「おい!みっともねえから、やめねえか!」 と一喝すると、ぴたっと騒ぎが収まる。 「全く、俺がまだだっつうのによ」 と呟くと、突然着物の懐からサイン色紙とペンを取り出し「すいませんけど、サイン、いただけますかね?」 と頭を掻きながら、遠慮がちに差し出したのだった。  現在は二〇一一年八月二十六日金曜日午後六時。 ジムノペティ計画から二十八日目。  現時点の自殺者数二五二七〇名  現時点の精神錯乱者数二一六四名  現時点の完全善人者数五六六名
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