第1章

3/24
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 そうして、玄秋と雹の、世紀の闘いが終わってから一週間後。 雹からマスコミ関係者全員と、警察や公安の高官宛てにメールが届く。 『私の名は雹。 現在、くだらん噂が流れている様だ。 司一十三とかいう女子高生が、私を倒す、とか言う噂だ。 だが、現実は厳しいものだ。 一週間前、私は映画の撮影に紛れ込み、司一十三と対決したが、 あっけなく一十三くんは私に敗れ去った。 殺そうとしたが、神人の深見玄秋に邪魔をされてしまった。 私は誓う。次の映画の、私との最後の闘いのシーンに、 私は司一十三くんの命を断つ事を。 警察諸君。公安の皆さん。 どうぞ、一十三くんを守り、私を逮捕もしくは射殺してみなさい。 これは挑戦状です。 それでも私が勝つと思うがね。 それから、もう一つ。 これは、歴史上、類を見ない素晴らしい映画になります。 私と一十三くんとの最後の対決以外を、映画公開し、 クライマックスシーンは、実写の生中継としていただきたい。 そのほうが盛り上がる。警察諸君は、私を全力で邪魔するがいい。 この要求を飲み、撮影し、一十三くんが勝てば、 ジムノペティ計画を中止しよう。 対決の場所は、映画の中の雹の教団本部建物前の広場だ。 日時は、映画のクランクアップの日。 十一月十一日。時間は夜の九時スタートとしよう。』 雹のメールに、日本全国が沸いた。 警察も公安も、雹が現れるというので、 映画関係者と協力体制を取り、 雹を確保しよう、という話になった。 そして、テレビでは、連日特番が組まれ、 大山と泉と半田と一十三は、特練棟に籠りっきりとなった。 闘いの場所には、日本全国からカメラを持った若者が集まりだし、 警察は、その規制に忙しかった。 日本全国市民にとって、一十三は正に、最後の希望だった。 テレビ局には、一十三の生の声を聞きたい、 という問い合わせが殺到したが、マスコミ上層部の人間は、 特練棟の事を、一切公表せず、 一十三の特訓を見守る方向で意見が一致していた。 映画『化物』の公開が、クランクアップに先立ち、 十月二十八日に決定すると、 全国の映画館に、大行列が並ぶ、異例の事態となった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!