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「ま、道中は、くれぐれも気を付ける事だな」
「ご丁寧に、有難うございます」
信行は、最後に姉弟同士の顔に戻り、何ともイヤらしい笑みを浮かべて、そう言った。
菜華は嫌味と捉えたみたいだが、妙に引っかかる言葉である。
(はぁ、最後の最後まで、本当にイヤな奴っ!)
何故、彼女がそう思ったかといえば、道中に気をつけるもなにもない。
必要以上に警備を厳重にしてくれたのが、彼自身だからだ。
てっきり、利家と二人だけで追い出されるかと思いきや、意外や意外。
選ばれた十人もの正規兵が、菜華を護りつつ、駿河まで同行してくれる。
何れも屈強そうな面構え、内、二人は種子島まで携えていた。
馬車も用意してくれ、さらに籠まで。
(こんだけ配慮したから、感謝しろとでも言いたいんでしょ!)
……………
大名家同士の婚姻なのだから、警備は厳しくて当然。
だが、信行からすれば、菜華が死んで欲しい存在なのは、確かな事実だ。
もちろん、この者達が途中で裏切り、彼女を亡き者にする可能性も否めないが…………
(そんなに、今川家との同盟が大事なのかな?)
未だに、政治の事を良くわかっていない菜華は、内心で首を傾げつつも、とりあえず籠の中へと乗り込んだ。
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