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わさわさと揺れる草に薄暗い祠。そして、ゆう。何気ない会話をちらほらしていたら、すっかり緊張もとれていて夢中になって話しをしていたんだ。
「そっか、思い出した。あの狐の踊りは、僕が考えたやつだった」
ゆうの言葉から思い出がひとつずつ埋まっていく。懐かしさと新鮮さ、それと青春?ゆうから女の子の香りがしてくるんだ。
「そういえば?ここって昔、良く遊んでいた神社だよね?記憶が曖昧なせいか、違う神社にみえるし、阿近はいないのかな?」
唐突に聞いたのは不味かったか?ゆうがきょとんととしている。
「阿近…か。こっちきて」
ゆうは祠の方へ僕を連れていき、祠の扉を開けて中に納められている、狐の像を僕にみせた。
「忘れちゃったとおもうけど、これが阿近よ。」
少し悲しそうな顔でゆうが答えた。僕には意味がわからない。
「おかっぱ頭の男の子だよ。ほら、いつも禿みたいな格好をしていてさ、神社の神官だっていっていた子。親友だったからよく覚えているんだ」
ゆうは手を後ろに組んでから、少し嬉しそうに
「そうだよ。これが阿近。」
優しい目で僕をみつめた。ハテナマークで頭がいっぱいになっている僕に
「あの約束、覚えていてくれたんだね」
「ん!?約束…?」
なんのことだろう?
「ごめん。思い出せない…どんな約束したんだっけ?」
え?ゆうの瞳から涙。
バチーン!
おもいっきり左のほっぺたに衝撃が走る。
「みちゅの馬鹿…」
泣いているゆう。僕はほっぺをおさえながら
「ごめん。」
ゆうに謝り倒した。そのかいあって泣き止んだゆうと仲直りはしたものの結局、どんな約束をしたのかは教えてくれなかったんだ。
その後も色々な話しをしていたけれど、夜がそばにちかづいてきて僕とゆうは名残惜しくも家へ帰っていった。
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