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   どこからだろう。ぶーんと小さな音が聴こえた。反応するように、亮太の右肩がわずかにふるえた。そして亮太はかがみこんで、床のごみを拾いあげたのだが、そこに、奇跡を見た。 「マスター、またハエが紛れ込んでるぜ。  保健所に怒られるぞ」  驚いた。亮太は飛んでるハエを拳で打ち落としたのだ。こんな芸当を事も無げに出来るのなら、亮太の腕は相当なものだ。武闘派やくざといえど、亮太には(かな)わないかも知れない。  おれの迷いは消えた。失敗は許されないのだ。助太刀をたのむことにした。 「亮太さん、申し訳ない。  力を貸してください」  すると亮太は太陽のように笑った。 「たとえ断られても、おれはいきますよ。  愛田さんのためだけじゃない。  由良さんのためにもね」    そしておれと亮太は、ベンツを後にした。  やくざたちが待ち受けているであろう、東浜へと急いだ。  今いくからな。  優子にナナミよ、無事でいてくれ。  
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