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「ほら、雪ちゃんそろそろ寝ないと」
そう言う圭介の耳は、まだほんのり赤い。
「雪ちゃーん、聞いてる?」
「きいてる」
ちゃんと聞こえてる。
でも、まだちょっと離れたくないだけ。
そっと、私の髪を撫でる圭介の手が優しい。
アスファルトが熱を放出してるから、夜だけど体はもう汗ばんできている、でも涼しい部屋のなかよりも、圭介の腕のなかの方がいい。
「雪ちゃん……」
「一緒にいたいのは私だけ?」
見上げると、綺麗な琥珀の瞳が驚いたように見開かれている。
それから、また口元を片手で覆って顔を背けた。
うん、これは困ったときの圭介のくせ。
困らせたい訳じゃないから、大人しく家に入ろうと思って体を引いた。
でも、直ぐに圭介に引き戻されて、寝なさいって言ったのは圭介でしょって文句を言おうとした私は、視界いっぱいの圭介に飲み込まれた。
柔らかく唇にふれるのは……
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