一章

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薫は週に一度ほど、お気に入りの紅茶を楽しみながら、その端末を開く そして決まって、鼻歌の続きのように道雄に 「貴方が拒否する理由が分からないわ。こだわることは何もないじゃないの」 と、悪気も嫌味もなく、素直に話しかける 「……こだわってるわけではないけど、必要だと思ったことがないんだよ」 道雄はそう言うとタバコに火を着け、その味としばし戯れた 「今月は、7ポイントも加算されたわ。海岸のゴミ拾いに行ったのがよかったのかしら」 薫は毎月こんなふうに、端末の数字に一喜一憂する。といっても、道雄が薫と暮らしはじめてからこの方、数字が減ったという話は聞いたことがなかった
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