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対して目の前の彼は「なんでもない」と言わんばかりに、湛えた笑みを崩さない。
その時、私は理解した。この少年は自分たちを縛りつける檻――“枷(かせ)”を壊そうとしているのだと。
私に彼を止める権利などなかった。
2人の少年の間を抜けるように、ゆっくり、ゆっくりと大階段の脇へと後退する。炎はあらゆる物を食いつくし、広間を覆う。
「火事だ! 逃げろ!」
くるり、2人に背を向け地下施設へと駆け戻り、退避を促す。
再び広間へ戻った時、同じ容貌をした2人の少年は一面火の海の中で向かい合っていた。
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