行列のできる店

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行列のできる店

 久し振りに地元へ帰った時、ふと思い出して、通ってた高校近くのラーメン店に足を向けた。  当時通い詰めていた店で、美味い・安い・早いの三拍子揃った優良店だ。  記憶を頼りに店に向かうと、そこには驚く程の行列ができていた。  そういえば進学直前くらいに、タウン誌か何かのラーメン店特集で取り上げられてた気がする。  あの頃も混雑してたけど、ここまで評判の店になってたのか。  なんだか誇らしいような寂しいような気分で列に並んだ。  すでに一時を過ぎているのに、俺が並んだ後からも行列は伸び、途切れる様子はまるでない。とはいえ、後ろがどれ程長蛇になろうと、それは俺の知ったことじゃない。気にするべきは前の面々の減り方だ。  そこそこの速度で客が店内に入って行く。もう少しで俺も店の中に入れそうだ。  後十人。五人。三人、二人、一人…。  ようやく入店した店内で、俺は茫然と立ち尽くした。  そこには人っ子一人いなかった。  客も従業員もいない。机とテーブルはあるがそこに着いている者はなく、見ればうっすらと埃が積もっている。  カウンターから覗ける厨房も同様で、店長もお弟子さんもいないし、そこもやはり埃だらけだ。  何が何だか判らず俺は店の外へと飛び出した。 
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