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「何よ、それって私の育て方が悪かったってこと?」
「そんな事言ってないだろう。ただ、俺の言葉があいつには何も伝わってない気がして、それが気持ち悪いんだ」
「あなたはまだいいわよ。私なんか、1日あの子と一緒にいるのよ。赤ん坊の世話でクタクタだっていうのに、あの子ったら物陰から何も言わずにじっとこっちを見てるの。私だって、もう限界よ!」
「おい、声が大きいぞ。赤ん坊が起きるだろう。それに……あいつも起きてきてしまうかもしれない」
「だからなんだって言うの? 聞かれたって構わないわ。もう嫌なのよ、もう嫌!」
苦しそうにそう叫ぶお母さんの声を聞いて、僕はそっと自分の部屋に戻った。
そうか、お父さんもお母さんも、僕のことが気持ち悪いんだ。
皆と上手く付き合っていけないのは苦しかった。
でもそれは、全部、僕のせいだったんだ。
何だか変な笑い声がこみ上げてきた。
枕に顔をうずめて、僕は声を殺して笑った。
声を抑えようとして、お腹がヒクヒクする。
そして……少し悲しかった。
閉じたまぶたの隙間から、ちょっとだけ涙が流れた。
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