妄執の家

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私達が学校を休んだあの日、父と母は友人の家を訪ねていった。 おじさんにうちで起こった事を全て話し、友人が義母と一緒に暮らすことの不安について話し合いをしたらしい。 本来なら家庭内のことに首を突っ込むなと言われても仕方のない話なのだが、おじさんは特に反論するでもなく、友人が家を出る事を承諾したという。と言うよりも、後妻と娘の確執に疲れてしまって、どうでもいいという感じだったと言っていた。 「大事なのは後妻の方で、娘に関しては勝手にすればいいとでも思っているようだったな」 父は帰ってきてから吐き捨てるように、そう言った。 『ちゃんと学校へ行くこと』 『月に一度は電話で連絡すること』 その他、いくつかの約束を決めて、友人は家を出る事を許された。 学生だから、贅沢なマンションなどへは住めない。学校へ行くのに不便のない場所に見つけた、こじんまりしたアパート。家賃はおじさんが出してくれるが、何かあった際の緊急連絡先は私の両親になっている。学校へも事情を説明して、特別に許可してもらった。 簡単な引越しを済ませ、荷物も片付いた頃。我が家では友人を招いて食事会が開かれた。 数日ぶりに見た彼女は、見違えるほどに明るい表情になっている。 キッチンで食器を出す手伝いをしながら、私と母は、この判断は間違っていなかったと笑いあった。 よく笑い、よく食べ、友人は本当に楽しそうだ。 あいにくと明日は学校なので我が家に泊まる訳にもいかず、父が友人のアパートまで送っていくことになった。 「じゃあ、またね」
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