妄執の家

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ああ、良かった。これでようやく彼女も安心して暮らせる。 あんな意地の悪い、性根の曲がった女から離れて。 実の娘よりも再婚した不倫相手の方が心配だなんて、あんな無責任な父親から離れて。 あんなギスギスした、妄執だけが渦巻いているような家から出られて。 本当に良かった。 私の大事な友人を傷付けておいて、自分達だけ幸せになろうなんて許せない。 まあ、赤ちゃんには可哀想な事をしたかな。でも生まれて来たら、もっと彼女を苦しめるでしょ? だから――ね。私、色々調べたのよ。どうやったら流産させられるかを。 妊婦さんが気をつけなくちゃいけない事って、結構たくさんあるのね。ハーブとか食材とかアロマとか。 ちゃんと出来るかどうか分からなくて不安だったけど、上手く行って本当に良かった。 私がバイトをしている喫茶店にあの女がお客として来た時には、思わず天に感謝したほどよ。 あんな家、出て正解なんだよ。 あんな家にいたって、彼女は幸せになれない。 まさかあの女が出てくるとは思わなかったけど、大丈夫だよね、きっと。だって、彼女の後ろにちゃんとおばさんが乗ってるの、視えたし。 私がやったこと、おばさんだったら分かってくれるでしょ? これからも私は――彼女の友人です。 了
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