レール上を走る男

9/9
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「由宇?どうした?何か嫌なことでもあった?」 「…どうしよう…エッチなこと、したいのに、」 「うん」 「藤次郎としたら…」 「うん」 立ったまま繋がり合った状態は、すげー間抜けみたいだ。 でも、今離れたら駄目な気がする。 本能が、悟った。 「藤次郎としたら、もう他の人とできないよ…」 なんて愛しい存在。 もう今まで何百回としてきているというのに、今更。 俺とのエッチが気持ち良いからとか、そんな簡単なことじゃない。 由宇が言いたいのは、きっと、 「離れられなくなっちゃうよ…」 ごめん、そうしているのは俺だ。 由宇が離れないように、どこにも行かないように縛っているのは俺だ。 俺は由宇から離れていくのに、由宇が俺から離れていくことを許さないなんて、なんて身勝手。 「ごめん」 それでも、俺は。 「立ったままは、やっぱキツイな。ほれ、俺の首に腕回して」 「え?」 よっ、と腰を抱え上げると、由宇は目を覚ましたように驚き俺にしがみ付いた。 「ちょ…怖いっ…」 「ほれっ」 「やぁっ!!」 腕の力を少し緩めると、ガクンと由宇の身体が下がった。 「落ちたくなかったら、しっかり掴まってなさいね」 「…やっ、こんな体勢…」 「軽いから落としたりしねえよ」 同じ高さに顔が来て、感じてる顔が良く見える。 やっぱり、スゲー可愛い。 ダントツに可愛い。 離せない。 「藤…じろ…っ…」 「んー?」 「キスしてっ…」 「…喜んで」 柔らかくて、最高。 言葉にならないほど、気持ちいい。 こいつとこうして繋がり合えるのは、あと何回だろう。 あと何回、由宇の温もりを抱いて寝られるのだろう。 そして俺は、あと何回、由宇を泣かせるのだろう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!