第6章

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「あ、あの、……なんですか、これ」 目の前に鎮座するのは、はにわだ。 丸い目 開いた口 黒く塗りつぶせば、はにわそのものだろう。 要は固まったままの斉藤。 この成り行きを解明できなかったらしい。 そりゃ、そうだろう。 久しぶりに現れたもう、なんとも思ってないかもしれないオヤジに襲われてるんだ。 あの夏の夜から連絡を取っていた訳でもなく どこかで会っていたわけでもなく この店にだってコーヒーすら飲みに来てはいなかったにもかかわらず いきなり こんなふうに 「ちから、抜いて」 「……っ」 斉藤に 「ほら、」 「ン」 覆いかぶさって 「そう、そのまま」 「…ハ…ァ」 唇に噛みついた。 ネクタイの結び目に指をかけ、首元を緩める。 別に酸素不足ではなかったが 心なしか苦しさから開放された気がした。 今までとは違う 触れるだけのものとも 少しだけ掬うものとも どれとも違う口付けは 銀の輪の天使を みだらに堕としめた。
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