最終章 好奇心の代償

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「あー、何か面白い事件ないかなぁ……」 俺はそう呟きながら、自分に椅子の背もたれに体重を掛けだらしなく座る。そして天井を見てそのままボーっとする。 あ、俺の名は辛川槙(からかわしん)。年は30で一応記者という仕事をやらせてもらっている。といっても俺の勤める会社は芸能人や政治家のゴシップ記事を載せた事は一度もないが。 幻妖社。東京の、みんなよく聞くような出版社の近くにあるこじんまりとした会社。社員はざっと数十名、社長はかつては記者で怪奇現象の取材であちこち飛び回ってたそう。一応雑誌も出していて”怪奇現象実録”はその手の人たちからは、かなり人気なのである。 まあ、人気の訳はその取材記事の信憑性と取材で得られた圧倒的情報量であり、それをやってのけるのが社長以下、数人の記者であるのだが俺はその中に入っていない。いや、当たり前なのだが。 確かに俺だって記者として何かすごいネタを手に入れ、雑誌で特集を組んでやりたい。しかしあまりに他の記者が”やば過ぎる”。どうやって仕入れたんだってネタを持ってきたり、中には妖怪を直接目撃した人もいるのだ。 特に俺より年下の記者が凄いのだ。女性で20代前半なのだがほぼ毎日のようにあちこち回っては何かネタを持ってくる。しかも毎回特ダネであり取材で手に入れた情報も大量で信憑性があるという、いったいどうしたらそんな情報手に入れたんだと驚愕させられるものばかり。 しかも美人で人がいいし明るいし……、もう先輩としては頭が上がらないのである。 ……話を戻そう。俺は今、今度の雑誌に載せる記事の資料を集めている。 基本的に俺は全国で起きた奇怪な事件事故などを取材し、それを記事にしている。しかし、いつも小見出し程度か1ページの半分ぐらいの大きさである。 いつもはたわいもない事や誰かの二番煎じのような記事を書いていたのは認める。だが今回は、今回は違うのだ。 【各地で起きる怪奇事件特集】、そう銘打っていくつかの事件を取り上げるという、一世一代の賭けともいえる記事を書くことが決まったのだ。
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