第1章

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2  あるよく晴れた空の高い日。青が降りそそぐ。風が囁きながら草を揺らす。僕は河原の土手で寝転がっている。学校に行こうと家を出たのだけど、あまりにも心地よい天気が僕を川辺へと誘った。昨日は一日雨で夜中まで降っていた。どんよりした一日だった。それが今日は朝から空が大きく広がっている。気持ち良い朝が僕を川へと引き寄せた。僕はここの川の土手が好きだ。緑があり、虫がちょっといやだけど、でも生命を感じれるのは好きだし、野草や菜の花が揺れて薫りが薄ら漂うここが好きだ。まぁ、なんにせよ、いわゆるサボりだ。人生は長い。これくらいの寄り道は進んでするべきだ。誰か偉い人がきっとそう言っていることだろう。だれか偉い人そう言っておくれ。若者にはサボりは必要なのだ。  風が顔を撫で、草の囁きが耳をくすぐる。その心地よさに別世界へとダイブする。そこの世界での僕は無敵だ。なんでも願えば叶う。でも足は地につかずにフワフワと浮きだっている。つまりは睡眠を貪った。  耳に空気を震わす振動が届く。それは夢の出来事なのか現実なのか判別できずにいる。何度も僕の鼓膜を揺らす。次第にそれははっきりとした音として僕の脳に届く。つまりは夢から現実へと還ってきた。 薄目を開けて辺りを見る。左にはゴウショウが寝ている。右にはキリコがいる。ギターを弾きながら。ギターと彼女の声が僕の夢に入り込んできてたのだ。上手いかどうか技術的なことはわからない。弾きはじめたのも最近だからまだまだなんだと思う。でも僕は彼女の出す音が好きだ。
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