第十四章 追跡者

2/4
1558人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
 雪の上に続く血の跡を追って、ショウは必死に夜の森を駆けていた。  振り返れば遠く、暗闇の向うに無数の松明の火が揺れている。  あれらが血の跡を見つける前に────いや、もう見つかっている可能性が高い。早くレオンを逃がさなければ。  いつか獣に追われた森を、今は人に追われて走っている。あの時以上に気がはやり、泣きたいくらいに焦りはつのった。  どうして。なんで。村へ来たんだ。危険は分かっていたはずだ。二度と会わないと言ったのに。俺のせいか。俺のせいなのか……!  焦りと後悔に胸が押しつぶされそうだった。  別れのあの朝、自分も会わないと言えばよかったのか。二度と会わないと言って、きっぱりと決別していればよかったのか。  食いしばった歯がぎりと鳴る。  決別はきっと、出来なかった。同情心なのか愛情なのか分からなくても、傍にいてやりたかった。  一人ぼっちで寂しがりやで、不器用ながらひたむきなレオンの傍に、自分はいたかった。  月明かりが陰る、雲が出てきたのかもしれない。もう見つかってもかまうものかとランプを晒して血の跡を追う。暗闇でそれは不吉な黒い染みのように見えた。  まさかもう、それとも狼に襲われたりしていないか。  レオンになにかあったらと思うと、自分が死ぬことよりも怖い。 「レオ……レオン……、どこだ!?レオン!」    途中から忍んでいたのも忘れて、無我夢中で叫んで走った。  やがて雪の上に黒いかたまりを見つけた────倒れた獣の背中だ。  心臓がどくりと跳ねた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!