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雪の上に続く血の跡を追って、ショウは必死に夜の森を駆けていた。
振り返れば遠く、暗闇の向うに無数の松明の火が揺れている。
あれらが血の跡を見つける前に────いや、もう見つかっている可能性が高い。早くレオンを逃がさなければ。
いつか獣に追われた森を、今は人に追われて走っている。あの時以上に気がはやり、泣きたいくらいに焦りはつのった。
どうして。なんで。村へ来たんだ。危険は分かっていたはずだ。二度と会わないと言ったのに。俺のせいか。俺のせいなのか……!
焦りと後悔に胸が押しつぶされそうだった。
別れのあの朝、自分も会わないと言えばよかったのか。二度と会わないと言って、きっぱりと決別していればよかったのか。
食いしばった歯がぎりと鳴る。
決別はきっと、出来なかった。同情心なのか愛情なのか分からなくても、傍にいてやりたかった。
一人ぼっちで寂しがりやで、不器用ながらひたむきなレオンの傍に、自分はいたかった。
月明かりが陰る、雲が出てきたのかもしれない。もう見つかってもかまうものかとランプを晒して血の跡を追う。暗闇でそれは不吉な黒い染みのように見えた。
まさかもう、それとも狼に襲われたりしていないか。
レオンになにかあったらと思うと、自分が死ぬことよりも怖い。
「レオ……レオン……、どこだ!?レオン!」
途中から忍んでいたのも忘れて、無我夢中で叫んで走った。
やがて雪の上に黒いかたまりを見つけた────倒れた獣の背中だ。
心臓がどくりと跳ねた。
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