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彼女が本に視線を落としたまま言った。
A「駅員さん。読書中の女子高生をそんな舐めまわすように見ていたら、近隣住民の方に通報されますよ」
B「そんなこと言うなら家で読め。毎日こんな暑いところで――…」
A「女子高生を家に呼ぶなんて困った大人ですね」
B「お前の家だ」
A「あなたのような不純な野獣を家にお招きすることはできません」
B「何で俺がお前の家に。それに俺は純朴な――…」
A「草食」
軽く睨むと、彼女は本を閉じて立ち上がった。
A「冗談です。それに不純な目をしているのは私」
返事に窮した俺の隣を軽やかに通り過ぎ改札を抜ける。そして振り返り笑顔で言った。
A「ちなみに私は肉食」
小さく“ガオー”と付け足す仕草にいささか胸の高鳴りを覚えたが押し殺した。
夏の暑さ。思春期の揺らぎ。
そんなものではないと証明されるまで
俺達は明日もたわいもない話を繰り返す。
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