夢の終わり

18/27
493人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
王子はシンデレラの手を握り締めると、ゆっくりと立ち上がった。 ピアノの音色は、二人を包み込むかのように優しく流れる。 「さあ」 優しく微笑む王子は、シンデレラの腰に手を回して音楽に合わせながら揺らめいた。 シンデレラは、社交ダンスのステップなど踏んだことはないだろう。 それでも、王子のエスコートによって美しく舞い始める。 やがて、王子とシンデレラの踊る姿を見て、舞踏会は元の空気に戻り始めた。 王子とシンデレラの躍りに、沢山の人の視線が集まる。 俺もその中の一部で、二人の笑顔と幸せそうな雰囲気に見とれた。 『さっきの質問の答えだけど……』 不意に心の中で響き渡る光刀の言葉。 ん? 『もし私が、あの男の様に閉じ込められた存在だとしたなら……』 鮮やかに煌めくシャンデリアの灯りが眩しいせいだろうか。 『私も外に出てみたい。“私自身の世界”があるとして、それを忘れているとするならば取り戻したい。そして、君と直接会って話をしてみたい』 「ああ」 返事は思わず声に出してしまった。 復讐だけじゃなくてもいいのかな? 誰かを救いたいなんて気持ちがあってもいいのかな。 『ありがとう。私は君を支え続けるよ』 きっとシャンデリアの灯りが眩しいせいだろう。 重たい何かから解放されるように。 心が少し軽くなったかと思えば、自然と涙が込み上げていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!