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王子はシンデレラの手を握り締めると、ゆっくりと立ち上がった。
ピアノの音色は、二人を包み込むかのように優しく流れる。
「さあ」
優しく微笑む王子は、シンデレラの腰に手を回して音楽に合わせながら揺らめいた。
シンデレラは、社交ダンスのステップなど踏んだことはないだろう。
それでも、王子のエスコートによって美しく舞い始める。
やがて、王子とシンデレラの踊る姿を見て、舞踏会は元の空気に戻り始めた。
王子とシンデレラの躍りに、沢山の人の視線が集まる。
俺もその中の一部で、二人の笑顔と幸せそうな雰囲気に見とれた。
『さっきの質問の答えだけど……』
不意に心の中で響き渡る光刀の言葉。
ん?
『もし私が、あの男の様に閉じ込められた存在だとしたなら……』
鮮やかに煌めくシャンデリアの灯りが眩しいせいだろうか。
『私も外に出てみたい。“私自身の世界”があるとして、それを忘れているとするならば取り戻したい。そして、君と直接会って話をしてみたい』
「ああ」
返事は思わず声に出してしまった。
復讐だけじゃなくてもいいのかな?
誰かを救いたいなんて気持ちがあってもいいのかな。
『ありがとう。私は君を支え続けるよ』
きっとシャンデリアの灯りが眩しいせいだろう。
重たい何かから解放されるように。
心が少し軽くなったかと思えば、自然と涙が込み上げていた。
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