499人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「なっ」
意識を集中させた瞬間、ミケランジェロの体が消失する。
今度は視線と重ならない。
何もない空間が凝縮し始める。
あたしは気配を感じて上を見た。
「あはは」
ミケランジェロは宙に浮いていた。
両足の膝から下辺りが、水につけているかのように歪んで漂っている。
何の能力だ?
あたしは地を蹴り、一瞬でミケランジェロとの距離を詰めた。
ミケランジェロは余裕を窺える態度で、距離を詰めてきたあたしと向き合う。
宙に浮かぶ二人。
あたしは、すかさず奴の顎を狙い右足を蹴りあげた。
蹴りは奴に命中するが、肝心の手応えを感じない。
顎にヒットした蹴りは、すっと空振りするようにすり抜けていく。
実体がない?
「僕は優秀な能力しか持たない。能力名。ゴーストボディ。ほら、体を幽霊にしちゃうんだ」
蹴り上げた足を引き、あたしは体勢を立て直しながら右腕に力を入れて拳を放った。
拳はまたするりと空振りする。
こんなインチキな能力ありかよ。
直後、奴があたしと同じく右拳を構える。
奴から放たれる右ストレート。
それはあたしの顔面に直撃する。
殴るときだけ実体がある……?
ぐちゃ。体の中で聞こえる鈍い音と同時に視界が吹き飛ぶ。
「硫酸かけちゃうぞ」
沈みゆくあたしを見下ろしながら、奴は笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!