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見ると、昼間に広場でコーヒーを売っていた男だった。
もう街を出歩いている人なんて誰もいないほどの夜更けだ。
男は下を向きながら、足早にどこかへ向かっている。
「和也。追うぞ」
いつの間にか一緒に覗いていた仁が、コソッとそう言った。
『あの男を追うことで、何かしらの手がかりを得られるはずだ』
俺と仁は、窓からそのまま飛び降りて、なるべく音が立たないように地面に着地した。
男は、俺たちに背を見せる形で早々と歩いていく。
「どこに行くんだろうな」
俺は気配を押し殺して、静かに足を進めた。
しばらく歩き続け、何度か道を曲がる。
俺たちは最善の注意をはらい、曲がり角で様子を窺った。
すると男は、BARと書かれた小さな看板が掲げられている建物に入っていく。
こんな時間に酒?
いや、店がやっている気配はない。
「和也。行くぞ」
仁がそう言って歩き始め、直線に進んだ時。
「──!」
数メートル先で、突然、上から何かが降ってくる。
何だ!?
俺と仁は、咄嗟に戦闘態勢に入る。
それは、人だった。
どこからか現れたその人物は、華麗に着地をする。
「君は……」
俺は光刀の柄を握り締めた。
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