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驚いて聞き返した俺に近付いてきた如月は、ポケットに手を突っ込んだまま地面に膝をつく俺を見下ろした。
その目がひどく冷めていて、俺は言葉に詰まる。
如月の目を見れば分かることだが、こいつは俺を助けたくて声をかけたわけじゃない。
たぶん気まぐれか、あるいはこれからこの近くで遊ぶのに警察沙汰なんかになって邪魔されるのが嫌だったというだけだろう。
それでも……
「あ、ありがとう。」
助けられたのは事実だ。
一応感謝の言葉は伝えておくべきだろう。
もっとも、如月の反応は予想通り薄かった。
「はあ、どーも。」
気の抜けた返事をした如月はもう俺に対する興味などなくなったらしく、さっさと踵を返していなくなってしまった。
……別になにかを期待してたわけじゃないけど……なんかなぁ。
っていうか、クラブ?
あいつ高校生のくせにそんなとこに出入りしてるのか……。
煙草に、クラブ。
なんかまだまだ叩けば埃が出そうだ。
ますます如月という人間が分からなくなってきた俺は、痛む体に力を入れて立ち上がった。
“なんで?”
思い浮かんだ言葉はこれだった。
なんで如月はそんなことしてるんだろう?
あれだけの容姿、成績優秀でスポーツ万能、実家は金持ち。
恵まれすぎてるくらいのあいつが、どうして煙草をすったり、本来未成年が出入りしちゃいけないクラブに出入りしたりしてるんだろう?
優秀なやつには優秀なやつにしか分からないプレッシャーみたいなもんがあるんだろうか?
“優等生”を求められることに対する反発?
いくら俺が考えたところで、どうせ分かりはしない。
ただ如月のあの硝子玉みたいに空っぽの目が強く印象に残って、頭から離れない。
この世界のどんなものにも一切興味がないとでもいうような、無機質なあの目。
あんな目を、たかが高校生ができるものなんだろうか?
俺も一般的に言えばグレてるほうだ。
売られた喧嘩は絶対買うし、優等生とは到底言いがたい。
だけど如月のあの目はグレてるとかそういう類のものじゃない気がする。
あいつはもっと暗くて深いところにいるような気がした。
「俺じゃ、だめかな……。」
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