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教室の戸を開けたら、そこには――
俺の所属するBクラスの女子達と隣のAクラスの女子達が水着に着替えていた。
ああ、成程ね。
次の時間はプールだったか……
俺の通う学校は国立であり、私立のような立派な更衣室などはない。
プールの授業は2クラス合同で行われ、水着に着替える際は隣のAクラスで男子が、俺の所属するBクラスで女子が着替えるのだ。
不思議なことに誰も声を上げなかった。
俺が普段愛読しているとっても健全なエロ漫画『TO LOVEろ』ならば、こういったシチュエーションでは「キャー、エッチー!」など女子たちから声が上がるものなのだが……ああ、まるで時間が止まったようである。
うんうん、分かるよ。
本当に驚いた場合って人間って息を飲むから声って出ないんだよね。
そう、俺はこの時、頗る冷静だった。
クラス内をゆっくりと見渡すと、クラスの男子に人気のある女の子の位置を確認して一礼をした後にそのまま黙って扉を閉じる。
ああ、これで明日から俺のあだ名は『エロ魔人』となるだろう。
しかし、どうしても『勇者』になりたかった俺は制服のポケットからスマートフォンを取り出すと録画モードONにして再び堂々とその戸を開けるのであった――
翌日から俺はクラス中の女子から『エロ魔人』と呼ばれ、録画した映像を送ったクラス中の男子からは『勇者』と呼ばれる存在となった。
おいおい、学生にして『勇者』と『魔人』だぜ!
凄いだろ、俺ってばこの歳にして超無敵じゃん。
じゃあ、次は『神』にでもなろうかな――?
そう考えた俺はインターネットにその動画をアップするのであった――
この物語はごく普通の学生が『勇者』にも『魔人』にも、そして『神』にすらなれるという……
ああ、そんな夢とロマン溢れるファンタジー。
―― 了 ――
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