教室のランドセル

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教室の戸を開けたら、そこには 赤いランドセルがあった。 それが教室の真ん中の机の上に、ポツンと置かれている。 その艶やか表面が夕日を反射させて輝いている。 そしてその存在は、不気味に思えた。 なぜなら、教室は教室でも、高校の教室に置かれたランドセルなんて、どう考えても不自然だからだ。 小学生は当然通ってきていないはずだし、うちの高校では通学鞄が指定されているから、ランドセルで来るようなやつもいないはず。 居たらいたで異端だけど。 となると、今この高校には小学生が来ているということになる。 それはなぜか? そしてどんな小学生が来ているんだろうか? 少し考えてみると、 1番高い線は、教師の子供が来ている可能性。 教師陣の中には既婚者もいるはず。 何かの理由でつれてきたのかもしれない。 他にも、妹をつれてきた生徒がいるということもありえる。 なんだろうか、校内見学だろうか。 高校が見たいとせがむ小学生がいたって不思議じゃないし、むしろそういう大人びてみたいというかわいげのある小学生は多いかもしれない。 さらに、勝手に忍び込んできている、なんてことも考えられる。 でもそれじゃあ、ここにランドセルを置いていっているのは、あまりに無防備で、見つかる危険性が高まるだけなんじゃないだろうか。 忘れていってしまったとか……? いや、こんな大荷物忘れるわけがないか。 それ以前に、親と、つまり誰か教師と来ている可能性もあるんだった。 もしかしたら荷物が重いからここに置いて、トイレに付き添いに行ったのかもしれない。 なら、そのうち帰ってくるだろう。 ここで待っていて鉢合わせてしまうのはちょっと避けたい。 さっさと忘れ物を取って帰ることにしよう。 ……いや、でも、やっぱり、気になるなこれは。 一体だれが、子供を連れて学校に来ているのか、とても気になってしまった。
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