1・狩り-1

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この星では、太陽を東と西にひとつずつ見る ことが出来る今の季節には、地域によっては 急激に気温が上昇し、通常の生物が活動をす るには適さなくなる。 しかしここ、広大な熱帯雨林の中には、直接 日光が差し込む所は少なく、太陽がひとつし か出ていない時の、夕方から夜の始まりのこ ろに似た過ごしやすい環境になるため、様々 な生物の活動場所になっている。 隠れる場所も多く、身を守るために利用して いる生物がいるが、それを捕食するための大 型の生物も集まってくる。 今も小さな生物の癒されるような優しい鳴き 声が聞こえたかと思うと、明らかに出会いた くない気分にさせる大型の捕食獣が吠える声 も遠くから響いていた。 大地をも震動させるその迫力ある声に、全て の生物は身をひそめ、ただ通り過ぎるのを待 つだけだった。 そしてここにも、その響きに不安げな表情を 浮かべて足を止めた、長い黒髪の少女がいた。 全身に警戒感を漂わせ緊張した様子で身構え ると、黒目の割合が大きい瞳をしっかり見開 き、声が聞こえた方向へ視線を素早く走らせ る。 その場でしばらくじっとして様子をうかがっ ていたが、声の主が近づいてくることはなさ そうだった。 表情を緩めホッと溜息をつくと、少女と同じ ように身構えていた近くにいる男と目を合わ せ、少しだけ微笑み合った。
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