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そう、首が無いのだ。
だからなのだろう、廊下で罵り合っている二人を、邪魔だ、と言わんばかりに避けて通る時、一言も発しなかった。
うん、頭が無いんじゃ喋れないよね。
少女は納得する。
そして、その首なしに続けとばかりに、教室にいたゾンビ達が続々と出てきた。
「……あのさ、ジジイ?」
「あっ?」
「アイツら皆、どこ行くの」
「ハア? ……帰るんだよ。おウチによ」
「おウチ? なにそれ?」
「バカヤロウ。墓地と書いておウチ、と読むんだよ」
「最初から墓地って言いなさいよ、紛らわしいわね。……じゃあさ、ウチらは帰んなくっていいの?」
「ハア? バカかお前は。帰らなかったら、朝日浴びてハイばいならーってな事になるぞ?」
「ばいなら? ……なにそれ、昭和のボケ? ……ダッさ」
「いいーんだよそこはツッコまなくて! 朝日浴びるほうに注力しろよ!」
「あっそ……朝日ねぇ……で、それ浴びるとどうなんの?」
マジかよこのバカ……んな事も知らねーでゾンビやってんのかよ――
そんな事を思いながら、ジジイは廊下に立って両手をあげてヤレヤレ……は、腕が無くて出来ないので表情だけでヤレヤレ的なものを表現する。
「なあ、釣りならゴメンだぞ?」
「いや、釣りじゃないから。……マジでわかんないし」
「まったく……まあ釣りでもいいや。敢えて釣られてやるよ。いいな、俺の方から釣られてやるんだからな! ……朝日浴びたとたん、俺達ゾンビの身体は一瞬にして燃え尽きちまうんだよ。……以上だ」
「なに、それだけ? ……面倒臭い感じだった割にはオチが無いわね。……やっぱ、ダッさ」
「いいんだよオチなんかなくて! コレ、一番大事なコトだから! ……絶ッ対覚えとけよ!」
はいはい、朝日、乙……と。
そんな感じでまるで意に介していない少女は、もげてしまった自分の右足を杖代わりにして、よいしょっ、とババ臭く呟いてから立ちあがった。
それにしてもこの杖、なかなか丁度良い。
「やっぱ最初が肝心よね。……ちょっとジジイ、先に教室に入って、私を迎え入れてちょうだい!」
「はあっ? なにバカ言ってんだよ。……さっきの俺の話し、聞いてたっ? ……朝! もう朝になっちゃうのっ!」
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