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「さあ、分らない。解るのは、あの時も今も彼女に対して何も残ってないって事だけだ。君に言わなかったのは、面倒だったからだ。今日になって話すのは、隠し事はしないと約束した事を想い出したから」
ジョンウは、優子をデッキの椅子に座らせて自分も横に腰掛けた。
「今の僕は、本当にずるいと思うよ。
君から何もかも取り上げて、ただ僕の為に生きろと言ってる。
仕事を理由に何日も一人にしたり、自分が寂しいからと毎日傍に居ろと言ったり僕の都合だけで、振り回してる。
だけどそれでも、 僕の為だけに生きてほしい」
優子はジョンウの頬に手を充てた。
「何と答えても、そうするでしょ」
「えっ?」
「私がどうしたいと言っても、思いどうりにしかしないわ」
「嫌か?」
「うん。とっても。でも仕方ない。貴方しか好きになれないって、解ってしまったもの」
優子は少しだけ拗ねて見せた。
「でも、できるだけでいい。一人にしないで。貴方に逢いたくて、死にそうになる」
ジョンウは自分の頬に充てられていた優子の手を捕まえた。
「約束する。君が死ぬ前には帰ってくるよ」
「もう、ひどい」
優子の頭を自分の肩に乗せた。
優子が傍にいればそれでいいと言った。
僕だって逢いたくて死にそうになると笑った
本当に、
貴方には勝てないと言うと、
当たり前だ。
魔王に勝てる人間などいないとまた笑った。
一週間ほどすると、また、ジョンウの忙しい日々が戻ってきた。
毎日、会社へ行く前にユニの所へ送ってくれて、
夕方には迎えに来た。
仕事が残っていると、優子と夕食を食べ、また会社へ戻って行く。
あまりにも忙しい彼を心配して、
「一人でも大丈夫」
と強がって見せたが、
「僕が一人での食事が嫌なんだ」
と優子を気遣ってくれた。
少し時間ができると、ユニの病室を覗いてくれて、
花や、果物を贈ってくれた。
彼が来ると、ユニも嬉しそうに見えた。
「オンマも、彼が気に入ってるの?」
と聞くと、「優子に優しければ、それでいい」
と笑った。
この頃ユニは少しづつ痩せている気がした。
心配になって聞いても「夏で食欲が無いだけ」
と笑うだけだった。
ジョンウに話すと、
「何か、食べられそうな物を持って行ってあげたら?」
とスープや、お粥を買ってくれた。
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