272人が本棚に入れています
本棚に追加
高校三年になった夏休み。
私は一人で旅に出る。
中学三年生のある日、引っ越して行ったあの子に逢う為に。
「いってきます!」
「ほんまに一人で大丈夫なん?」
「平気!!」
入念な下調べもした。
住所もちゃんと持った!
一人旅は初めてだったけど、あっちに行けば、君がいる。
そんな想いを胸に抱いて、家を出た。
海ちゃんが引っ越したのはおじいちゃんの持つ果樹園を、お父さんが継ぐためなんだと後から母に聞かされた。
大人の事情なら、子供は従うしかないんだなって思った。
私は大嫌いな勉強も頑張った。一人で頑張る海ちゃんに負けない様に勉強した。
文通はずっと続けていて、時が経つに連れて回数は減って行ったけど、途切れる事は一度だってなかった。
『必ず海ちゃんに会いに行くからね!!』
『うん。リクに早く会いたいな!!』
だから、高校生になって私はバイトを始めた。
母が勧めてくれた、新聞配達の仕事。
朝早く起きるのは大変だったけど、海ちゃんに会う為の資金を貯める為に。
最初のコメントを投稿しよう!