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「はい、谷原です」
『あっ、ええと、盛田ですが……』
この前、登録したから知ってますよ、先輩。
滅多に電話はしないと言っていた先輩だ、きっと本当に電話をしないのだろう。
この、なんとも電話に慣れていない感じ。
『今日って暇?』
今、ちょっとドキっとしたのはさ、どこかに誘われるのかなっていう期待感だよね、やっぱり。
いろいろ諦めてるというか多くは望んでないけれども、ひとり淋しく自分の誕生日をいつもの休日のように過ごすよりは誰かと過ごしたいと思う乙女心だ。
「悔しいけど暇ですね」
『ははっ、良かった』
いやいや、先輩、良くないんですってば。
誕生日なのに予定がないんですよ!
まぁ、それを言いだしたら10年前からずっとなんですけど。
むなしくなりそうで、すべて心の中で先輩に吐き出してみたつもりだ。
『ええと、何て言うのがいいのか分からないんだけど、遊ぼうか?』
「ふははっ、いいですね、遊びましょう!!!」
久しぶりに聞いた気がする。
遊ぼうかにウケた。
草むしりをして汗臭くなってるかもしれないから、シャワーくらいは浴びたいと思い、急いで用意をした。
それから、出かけるならと身だしなみ程度にお化粧を……気合いが入らない程度に……とは思いつつ何度も鏡をいろいろな角度で見てしまうのは自分にとっては誕生日だから……だと思うことにしておこう。
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