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「は、は、は、は…!?」
呼吸が浅い。死を覚悟したからだ、異常に心臓が高鳴ってる。
(……あれ、生きて…る?)
それどころか逆に外傷一つなかった、疑問を通り越して軽くパニックになる。
確かに、何かが衝突する音はしたんだ、
(じゃあ、何がーー…?)
「おい、いつまでヘタってんだじゃじゃ馬。」
「っ!?」
男の声がした、ドキリと心臓が跳ねて勢い良く顔を上げた。
「この俺が気まぐれで助けてやったんだ、感謝しろよ。」
「え、ぁ…はい。」
珍しく突いて出た敬語に、恥じらいがあった。
「アン、タ……学生?」
「そーだけど。」
真っ黒の髪に同じく真っ黒の瞳。黒い学ランに身を包む彼を形容するならば、さながら『漆黒』だった。
(何、コイツ…?助け、コイツがトラックから私を?あり得ない…)
衝撃はイチ人間に止められる規模じゃなかった、信じろと言う方が無理だ。
「感謝も言えねぇのかよ、まぁ…イイけど。」
ポケットから大福を取り出し、軽く口に運んだ。あれだけの大事故を目の当たりにしたと言うのに、呑気なものだ。
「‘‘また”な、じゃじゃ馬。」
「ーーーえ、ちょ、」
激動の数分を、少年は風のように現れ風のように去って行った。
「何なのよ、アイツ…」
惚ける事しかできない櫻子に、もう一つの情報が。
「っ!?」
衝突してきたトラックの真正面。
ギ、コ…
まるで受け止めたかの様に…手形が一つ、くっきりと残っていたのだから。
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