葛藤

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教室の戸を開けたら、 そこには……泣いている佐伯さんがいた。 放課後。 夕日が照らす教室。 長い黒髪の佐伯さんが ハンカチを握りしめて静かに泣いてる姿は 美しくて、 つい見とれてしまった。 「……!」   戸の開く音に気が付いたのか、 ゆっくりとこちらを振り返った佐伯さんは 酷く驚いている。 大きく見開いた瞳が一つ瞬きすると、 ぽろりときれいな涙が零れた。 「……ごめん」   ガラガラと音を立て、開けた戸を再び閉める。 閉まる戸の隙間から見えた佐伯さんは 真っ赤になっていた。 ……はぁーっ。 戸を背にため息。 ごめん、佐伯さん。 いるなんて知らなかったんだ。
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