第1章

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「中身は完全にご老人」 「うるさいな」 日曜店休日の昼下がり。大きな窓とソファーの背中側の隙間で日向ぼっこの私が、ぬくぬく寝ようとしていればまさにまどろみ手前で鬼が来た。渋々と毛布を膝に担いだまま立ち上がればやっぱり空気に触れたところが寒い。秋吉さんの部屋なのだから彼に主導権があって当然。けどこの人、どこでもこう 店でもこう私の部屋でもこう外を歩いてもこう。とにかく規則正しく折り目正しく右ならえ右、と言われれば。…ではなく、右を向いて下さいと指示を出す側の人間な訳ですよ。そうですね、私なんかはね?右ですよ右!ってそんな突然言われても!と慌てふためいている間に秋吉さんが勝手に私を右へ向かせてる、ってくらい毎度お世話になっておりますが ゴーゴー言っていた掃除機は音を止め、先程まで私が陣取っていたベランダへ続く大きな出窓から外を眺める後姿はひょろんと長く、そしてとても綺麗 「秋吉さん、掃除好きですね」 「日常当然の事を好きとか嫌いで分けてるところからもう、嫌いなんですね」 「嫌いじゃないですよ。一般的に、くらいは好きです」 「窓拭きますか?」 「冷える事は今は極力避けたい…」 「…」 「したくない訳じゃないですって。あ、コーヒーでも淹れましょうね。ね、ほら、この前買ったカップでも使って、ね」
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