樹海に沈む死体

171/174
1369人が本棚に入れています
本棚に追加
/369ページ
「私が言いたいのは、そこじゃないってば」 と言いながら、おや? 晴比古先生になっている、と気がつき、笑ってしまう。  殺しかけ、殺されかけて、気の置けない仲になったのだろうかなと思う。  生死を賭けた付き合いをしたわけだから。 「私、今までなにをしてたのかとか考えないことにするわ。  今までのことはすべて、志貴と出会うためにあったんだと思うことにする。  大好きよ、志貴」 「ちょっと子供が身内に甘えてる感じなのが嫌なんだけど。  いいよ、今はそれで許してあげる」 と志貴は言う。 「いや、あの、身内とあんなことしないから」 と亮灯は少し赤くなり、言った。  そっと手を差し出す志貴の手のひらに己の手を重ねた。  そのまま、手をつないで月と星に照らされた夜道を歩き出す。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!