樹海に沈む死体

173/174
1373人が本棚に入れています
本棚に追加
/369ページ
   結局、お姫様は王子様とくっつくわけね。  別に見たくはなかったのだが、晴比古は、たまたま、二階の廊下の窓から、樹海に居る二人がキスしているのを見てしまった。  絵になるな、やっぱり、と思う。  上に居るので、声まで聞こえてくる。 「志貴、この先も私が犯罪者にならなかったら結婚してね」  いや、待て。  今すぐにでも、犯罪者になりそうなのは、志貴の方なんだが、と思いながら聞いていた。  さっき、亮灯が口づけてくれた己の手を見る。  未来のアリバイ作りのために、志貴の居る此処から離れ、遠い街に一人住み始めた亮灯はあの助手募集の張り紙を見つけた。  そして、うちへ来て、仏眼相の話を聞いて、就職を決めたのだ。  この仏眼相が、彼女を引き寄せた。 「俺にはなんのいいこともねえじゃねえかよ」 と呟き、もう消えてしまえばいいのに、と強く両手を握り締める。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!