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「梨緒。行くぞ」
部屋を出る直後、琉生に声をかけられあたしも一緒に歩く。
お父さんとお母さんはそれぞれ仕事に戻っていったようだ。
廊下を歩いていると、琉生が隣でゆっくりと話し始めた。
「ほんとは俺、執事もちょっと続けたかったんだ」
「どうして?」
「執事はずっと梨緒の隣にいられるだろ?だからだよ」
「執事じゃなくてもいられるよ?」
「執事じゃなくなったら、雪音の勉強を優先させなきゃならなくなる。その分、梨緒と会える時間が減るじゃねえか」
まさか琉生がそんなことを思ってくれていたなんて、全然知らなかった。
あたしだって少し寂しい。
でも、この先ずっと一緒にいられると思えば、こんなのほんの少しの時間だ。
あたしの部屋に着くと、いつものように琉生が扉を開けてくれてそっと中に入る。
部屋に入った途端、あたしは琉生にギュッと抱き締められた。
「けど、俺もやっとお前と同じ立場に立てるよ。お前の荷物も責任も一緒に背負うことができる。それが嬉しいんだ」
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