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 オルフェがマンホールの蓋を開けるとそこは移民街だった。市場で買い物をしている人がまだ大勢いる。マンホールは市場がある建物の裏手にあったため、直ぐ様外に出るとエレンと人混みに紛れ込む。  市場の人混みを観察する限り、国家警察の姿は見当たらない。だが当然、制服姿の警官だけでないことはオルフェたちも当然分かっている。なるべく目立たないように人混みの流れに身を任せながら、出来る限り速やかに市場から離れようと動いていた。  しかし、危惧していた通り上手くはいかないものだ。移民街の住人に紛れ込んでいた国家警察の手のものが、いきなり2人に向けて銃を撃ってきた。弾は2人に外れたもののそのうちの1発は見事に黒人の若い男の顔を吹っ飛ばした。  オルフェはエレンの手を掴んで走った。オルフェが確認出来るだけでも4、5人はいる。今までの任務で会ったことのない連中ばかりだ。オルフェは銃を取り出し応戦する。1発、2発、見事に1つずつ相手の銃に命中させていく。  市場にいた者たちの多くが悲鳴を上げて散り散りになっていく。オルフェたちも上手く紛れ込んで逃げようとするのだが、これもまた上手くはいかない。移民に扮した警官が数人真っすぐ銃を向けながらこっちに向かって走ってくる。オルフェは警官たちの銃を撃ち落としていくのだが、全く怯む気配が無い。警官たちは直ぐ様腰に携帯している別の銃を手に取りこちらに近づいてくる。  オルフェはエレンとの逃亡の際、無駄な殺生を避けてきた。だが、このままではいずれやられてしまう。そう判断したオルフェは今までと異なり、躊躇うことなく直ぐ様相手の頭を撃ち抜く。  1人、2人、3人、見事なまでに相手の眉間に銃弾を撃ち込んでいく。確実に相手の動きを止めるには脳を狙うしかない。移民に扮したこの警官たちは確実に特別な訓練を受けている。もしくは薬物で洗脳や人体改造もされているのかもしれない。今までの犯罪者や警官たちと異なり、明らかに戦闘慣れしていて捨て身だ。  オルフェも段々と余裕が無くなってきた。エレンを守りながらだとどうしても限界が出てきてしまう。オルフェは敵の姿を捉えながらも逃亡に最適なルートを探していた。  しかし、オルフェの処理能力にも限度がある。背後から狙うスナイパーの存在にオルフェが気づくのが少しばかり遅かった。スナイパーの銃弾が発射される。銃弾はエレンの後頭部に目掛けて進んでいく。オルフェはエレンを庇い横に押した。銃弾はオルフェの背中を掠めて地面に小さく爆発した。オルフェは建物の上にいるスナイパーに銃を向けると眉間を撃ち抜く。  最適な逃走ルートを探している余裕は無い。そう判断したオルフェはエレンを連れて一番近い建物の裏路地へと向かう。裏路地へと向かって走っている間、オルフェはまた夢のようなビジョンが頭の中に浮かんできた。実験室のようなところで知ってる誰かと向かい合っているところ、そしてそれが紛れのなく彼女、エレンであるということが。
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