スキー旅行は波乱万丈!?

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「幹部を集めて俺の部屋へ来い」 「え」 しんしんと雪が降る冬の日の、晩のことだった。 夕食を食べ終え、大量の皿洗いをしていた雪菜の元へ、土方がひょっこり顔を出したのだ。 あまりにも突然で、しかも言葉足らずな土方に、雪菜は質問を投げかける余裕さえ生まれない。 だが、やっと冷静さを取り戻し、土方に問いかける。 「な、何でですか?」 「それは全員集まってから話す。いいか、30秒以内に集めろ」 「さ、30秒!!?そんなの無理に決まってんでしょ!!?」 アンタの時間の感覚はどうなってんだ!!! 怒りのあまり、泡だらけの手で抗議する。 フワッと泡が宙を舞い、シャボン玉のように漂う。 「ばっ、……てめェ、泡が飛んできてんだよ!!!10秒に減らしてやろォか!!?」 「どっちにしろ無理だからね!!?」 大して差ないからね!!? だが、この反駁は、どうやら土方には届かなかったようで。 「分かったな」と釘を差し、さっさと去っていってしまう。 皿洗いだってまだ終わっていないのに、どうやって30秒以内に集合しろっていうんだ。 ……まあ、なるべく早く行けばいいよね。 雪菜は完全に開き直り、いつも通りのペースで皿を洗う。 終わったあと、恐らく大広間にいると予想し、そこへ向かう。 案の定、残って雑談をしていた彼らに、土方に言われたことをそのまま伝える。 「えー……何それ……」 最初に不満を言ったのは藤堂だった。 あたしも同じ事を思ってるよ。 「本当にそれだけしか言われてないの?」 「はい。アンチキショー、国語力が圧倒的に足りてないんで」 「それ、土方さんに言っておくから」 「止めて止めて本当に止めて!!!殺される!!!」 「まあ……とにかく、行ってみるしかないだろ」 「そうですね」 食後のリラックスタイムを返上しなければならない不満はあったが、土方に逆らうのは命を捨てるのと同じ事。 不満と不安と不吉さと……いろんな「不」を抱えながら、彼らは土方の部屋へ集合する。
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