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「どうしたの?」
「一瞬でも仕事に思考を奪われたことが腹立つ。この三日間は、栞奈のこと以外、頭から追い出すつもりだったのに」
拓人の溜息が、私の髪を僅かに揺らした。
残念そうにしているが、声はそれほど怒っていない。
言っていることは本心だろうけど、仕方がないということも分かっているのだ。
「解決したの?」
「あぁ、後は国井でも対処できる。仕事の話は終わりだ」
そう言って、拓人は私の髪にキスをした。
甘えるようなキスに、心臓が音を立てる。
私が欲しいものを、拓人も欲しがっている。
疼く身体も、淋しく感じる唇も。
それを慰められるのは一つだと知っている。
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