書籍化御礼SS (その二)

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逞しい腕に触れると、返事をするように、一瞬だけ力が強まった。 次の瞬間には身体が離れ、横から手が伸びてきた。 身構える暇もなく、私の身体は抱き上げられる。 見上げると、月の光を映した拓人の瞳が妖艶に揺らいでいた。 浴衣の擦れる音まで妖しく感じるのは、すでに私の心と身体が敏感になっている証だ。 「初夜だな」 先程思っていたことと同じことを言われ、些細なことに喜んでしまった。 これから始まる夜を想像しそうになって、慌てて顔を覆った。 「初心な反応されると、ますますいじめたくなるな」 「……優しくしてよ」 「今の言葉で、それはなくなったと思え」 柔らかな布団の上に下ろされ、額に唇が押し当てられる。 丁寧にゆっくりと。 熱い唇は頬に下り、鼻に触れた。 「拓人」 「お前に呼ばれると、箍が外れる」
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