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「ありゃ、意外だわ。妹達が死んじゃう」
頭に流れる情報から漏れた言葉は、意外と冷静だ。
これでも七人の妹たちとは上手くやってきたつもりだが、それでもこのぐらいの言葉しか出てこないらしい。それは四十化家(しじゆうばけ)の二十七番目、時村(ときむら)の家系に生まれたからか。それとも、単純に私が最低なだけか。
おねえさま、助けて。おねえさま、いたいよ。おねえさま、ころされるよ。
脳みそに彼女たちの言葉が浮かぶ。彼女たちが戦ってるのは、都心から離れた山奥だ。
最寄り駅からは歩いて四十分、田舎だがそんなに交通が不便ではない。しかも駅にはコンビニがあり、私はそこで妹たちを見守ることにした。漫画雑誌を立ち読みしながら。
「……あぁ」
見守るのには望遠鏡などはいらない。私と妹たちは深い血で繋がっている。時村という、名の血が私達を糸で結んでいる。きっと、色は赤じゃなく、紅。だから、彼女たちを視覚に入れることすら必要ない。
彼女達が血を流せば、深い紅色の糸はソレを伝えてくれる。
おねえさま、月葉が死にました。おねえさま、わたしたちもだめです。おねえさま、おねえさま。
この声は、きっと火幼だろうか。
私は少年漫画を見ながら他人事のように考える。
彼女達の声を聞いたのは聴覚の耳ではなく、長い黒髪に包まれた頭の中。この脳みそだ。
深い血、紅は私達を名で結び、何処にいても分かる機械いらずの発信器になり、そして世間一般で言うテレパシーの真似事もしてくれる。とても、便利なものだ。
「あ、火幼も死んだ。月葉、火幼、水陽、金酔、土妖が死んだのか。あとは……木庸と日養だけか」
七人の妹たちをここから見送ったが、この様子だと一人も帰って来られないらしい。
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