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これで、美香とストーカー女が同じ服装であった謎は解けた。
そこからは全て、私の性格をずっと傍で見て来た、美香の狙い通りに事が運んだのだろう。
彼女はあの時、薄暗い女子トイレに座り込んでいたのだから、背格好は、はっきりとは分らない。
容姿や体型は、日中であれば、かなり違うとはいえ、ヘアスタイルや服装はほぼ同じ。しかも、俯き、垂れ下がった、長い髪で容姿は隠されている状態。
私の方はといえば、「この好機を逃がす訳にはいかない」と、ただただ、美香を消す事だけが頭を支配し、冷静な判断が出来ずにいた。
だからこそ、美香からの電話の内容を鵜呑みにし、更には、服装を見ただけで、トイレでへたり込んでいる人間を、しっかりと確認もせずに、美香だと思い込んでしまったんだ。
全ては、あの、美香からの電話から。
そして、死人からの電話なんかで、冷静さを失わなければ……。
いいえ。
初めから、彼女の場所を奪おうなんて思わなければ……。
たらればなんて、今更だけど。
貶めるような、嫌な笑みを浮かべた美香。
虫けらでも見るかのように卑しんだ目で、私を見下ろす、最愛だった人。
そして、両手にはめられた冷たい輪っかを見つめれば、どこでどう、間違ったのか。
後悔せずにはいられなかった。
了
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