◆10◆ 忍び寄る別れの魔の手

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   「なら・・・いんだけどな。」  頭を撫でながら不安げな表情をしてしまう。 「何、私に病気になってほしいの?」  叔父の姿につられそうになってわざと挑発してみる。 「そうじゃなくて、心配してんだ。」  案の定ムッとした元気な声が返って来て安心する。 「何を笑ってる。」 「元気出たみたいだから。」 「人のことからかわないで早く元気になれ。仕事上がりにまた寄る。」  少し乱暴に頭を撫でて部屋を出て行った。 「はーい。」  叔父が帰るとソロソロとベッドを這い出してトイレに向かう。ここ数日ほとんど食べ物を口にしていなかった胃には戻せるモが無いに等しかったが胃液を吐き出す。  高熱と吐き気そして、意識が朦朧とするくらいの酷い頭の鈍痛。 「うっ・・・ (何?前より酷い・・・・・・)」  雨の音だけが響く部屋の中であまりの体調不良で意識を手放した。  》 》  大切にする本当の意味も大切にされる意味も私は解っていなかった。  想いにも色々あるってことも。  結局は、〝誰か〟に守られ助けられていたことも。  私は、いますごく実感してる。    
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