◆10◆ 忍び寄る別れの魔の手

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      私の世界は、不平等で回っていてもほんの少しの優しさがあったこと。  それは、愛する人が居るという倖せ。  愛がちゃんと私の中にはあったこと。  だから、いまはその想い出だけで歩けるんだろう。  《 《 「月依さん、見て!!」  絵画コンクールの発表会に着ていくタキシードとドレス選びに来ていた。 「ふふ、似合うね。」 「本当?」 「うん。 (ちょっと、七五三っぽいけど・・・。) 「月依さんは?」  試着用のスペースから顔しか出していない彼女の姿が気になる。 「見せて。」 「お客様、心の準備はいいですか?」  何故かショップの店員たちがニヤニヤしていた。 「どう?」 「っ!!」  出てきた姿を見て言葉を失った。 「燵夜くん?」 「うん、綺麗だよ。」  泣きそうになるのを堪える。 「あんまり見ないで恥ずかしいから。」 「大丈夫、綺麗だよ。」  2人の姿を店員たちは微笑ましく見守っていた。  》 》  届かないことに慣れてしまった。  いまでは、手を伸ばそうとさえ思わない。    
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