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金縛りにあったように動けなくなっては、躊躇を繰り返す。
たった1枚の薄い壁が、私にはとてつもなく巨大な砦のように見えた。
(どう…しよ。早く…しないと終わっちゃう…。やっぱり…無理…。)
身体中から冷や汗が出て、寒気がする。頭では分かってても、脳裏にみんなの歪んだ笑顔が焼き付いて離れなかった。
一刻も早くこの場から逃げ出そう。
心が折れかけたその時――
『大丈夫。あたしらがついてる。あんたは独りじゃない。』
誰かの…声が聞こえた気がした。
私以外、いないはずなのに…。私は思わず、辺りをキョロキョロしてみるがやはり誰もいない。
(気のせい…?恐怖で頭おかしくなっちゃったかな…でも、それにしては…)
優しく、暖かい声が耳にまだ残っている。不思議なことに、震えが止まっていた。
幻聴でもいい。強くなれたのは事実だから。
私はもう一度、深く深呼吸をしてから手を勢いよく動かした。
――一瞬、私の手に、誰かの手が沢山重なってる気がしたが、すぐに消えた。
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