けじめ

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再び、背中を恐怖心が駆け巡る。みんなに、睨まれてるような感覚に、動悸が激しくなる。 私は、そっと目を閉じ、集中力を高めた。 (…大丈夫。こんな時は、あの人達を想いだそう。名前も、顔も分からない。あるのは、胸にあるわずかな温もりだけだけど…) ぐっと拳を胸に当て、大きく息を吸い込み…一気に吐き出した。 「っ…あなた達のしたことは…間違ってるよ…!!確かに…私は、暗いし、話しててつまんないし…問題あったと思う…だけどっ…だからって、苛めていい理由にはならないんだよ?」 勢いよく、話したせいで、酸欠になり、呼吸が荒い。 だけど、少しでも止まったら、勇気が萎んでしまいそうだったから、構わず続けた。 「私は、あなたたちに苛められてから、人の目を見て話せなくなったし、誰かが通りかかる度に、私の悪口を言ってる気がして恐くなる…!!自分の発言に自信が持てなくて…不快に思われてないか、常に不安に思っちゃう…。あなた達がしたことは、そういうことなんだよ…?あなた達は、面白くてやったのかもしれない…でもっ…でもね…?やられた側はすっごく追い詰められるの。傷は時間がたてば治るけど…その傷跡はずっと残るんだよ?人を傷つけるやり方で楽しみを見つけたって…大人になって、この時のことを思い出しても、何にも残らない…虚しくなるだけだよっ…」 教室に、私の声だけが響く。 恐怖心は、いつの間にかなくなっていて、冷静になっていた。 「…別に、謝ってほしいわけじゃない。ただっ…お願いがあるの。私と、同じような目に合う子がいないようにして…。こんなくだらないことは止めてっ…。いつか、自分に返ってくるよ…?もう二度と、人を傷つけないでください。…お願いします。」 泣くつもりなんてなかったのに、涙が頬を伝っていく。 何の涙なのか、自分でもよく分からない。
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